佐藤まどかニューアルバム
シベリウス ヴァイオリン作品集vol.1 「子守唄」
佐藤まどか (ヴァイオリン), 渡邉規久雄 (ピアノ)  

□ 曲目紹介

□ シベリウスと私

□ 共演者紹介





□ ご推薦のお言葉
・舘野 泉先生

・菅野浩和先生
  製造・発売
  コジマ録音 ALCD7118


曲目紹介

■ ソナチネOp.80
■ 4つの小品 Op.78
 ・即興曲 ・ロマンス ・レリジオーソ ・リゴードン
■ 5つの小品 Op.81
 ・マズルカ ・ロンディーノ ・ワルツ ・朝の歌 ・メヌエット
■ 6つの小品 Op.79
 ・思い出 ・メヌエットのテンポで ・特徴的なダンス ・セレナード
 ・田園風舞曲 ・子守唄


シベリウスと私

 シベリウスとの出会いの前に、その音の世界は目の前に広がっていたと思う。
 彼が自然から霊感を受けたように、私も幼い頃から北国の自然を感じ、慈しんできた。 雪に吸い込まれた無音の世界。待ちわびた春には、あふれんばかりのエネルギーでいっせいに花開く。いつも自然体でむきあえるシベリウスの音世界。
 その共感を、音に秘めたピアニスト渡邉規久雄氏との出会い。研ぎ澄まされた感性だけではない、シベリウスへの共鳴。この得がたいコラボレーションと、溶け合ったハーモニーをぜひ聴いていただきたい。
 「ソナチネ」のデュオが編み出す新しい世界観、「4つの小品」の親しみやすさ、「5つの小品」のきらめき、「6つの小品」の個性。その全てに思いを込めて。(佐藤まどか)


共演者紹介

渡邉規久雄(ピアノ)
 1974年インディアナ大学ピアノ科を成績優秀賞をもって卒業後ピアノ科助手を務め、 1976年に同大学院を修了。ピアノを林美奈子、林秀光、アベイ・サイモン、 ジョルジュ・シュベック、スタニスラフ・ネイガウスに師事。 室内楽をヤーノシュ・シュタルケルに師事。 1976年東京におけるデビュー・リサイタル以降、 国内ではショパンのポロネーズ全曲によるリサイタル、 彩の国さいたま芸術劇場「100人のピアニスト・シリーズ」、 シューベルトの最後の3曲のソナタによるリサイタル等のほか日本フィル、 東京都響、京都市響、仙台フィルの定期演奏会にもソリストとして出演。 今までにアメリカ合衆国をはじめ、 ピアニスト寺田悦子とのデュオリサイタルでメキシコ、パナマ、ペルー、フィンランド、 ロシアなどに演奏旅行を行っている他、 ヴァイオリニスト千住真理子とはカザフスタン、ウズベキスタン、 キルギスタンの中央アジアへの演奏旅行を行うなど国内外で精力的に演奏活動を行っている。 父は指揮者渡邉暁雄、祖母はフィンランド人で声楽家だった。 北欧特にフィンランド音楽に造詣が深く2003年6月に 東京において行われたオール・シベリウスプログラムによるリサイタルはCDとして発売され好評を得ている。 現在武蔵野音楽大学ピアノ科教授を務める。


ご推薦のお言葉

CD 発売に寄せて    舘野 泉

佐藤まどかさんがシベリウスとバルトークの協奏曲を鮮やかに弾ききって、シベリウス・コンクールでの輝かしい入賞を果たしたことはいまだに鮮烈に記憶に残っている。充実した表現力と張り詰めた緊張感は、シベリウスの持つ北欧独特の憂愁の情にひたと寄り添うかのようであった。今回、渡邉規久雄さんという絶妙のパートナーを得てシベリウス・ヴァイオリン作品集がリリースされることは、作曲者没後50年を記念するに相応しい企画である。心から喜びたい。

シベリウス没後50年にふさわしい試み  菅野浩和

 シベリウスにとって、ヴァイオリンは、心の思いをひたすら託せる楽器でした。少年時代からこの楽器にのとりことなったものの、やがて自身の「あがり症」に気づいて、ヴィルトゥオーゾ志向から室内楽演奏と作曲家目標へと路線変更をしたものの、この楽器のための作品は生涯にわたって書かれたのでした。
 こうしたシベリウスのヴァイオリン音楽にこめられたその想いに、大きな関心と深い共感で取り組んでいるのが佐藤まどかです。彼女のヴァイオリニストとしての活動は、「シベリウスも(’)弾く」のではなく、その中心が「シベリウスを(')弾く」に置かれていることで、わが国では唯一であり、世界的にも注目される「シベリウス奏者」です。彼女は演奏だけではなく、シベリウスのヴァイオリン音楽の研究にも意を投じて、既に穿った見解を機会ある度に発表してきて、そうしたアプローチが演奏時の、的に当たった掘り下げに大いに資していることから見ても、わが国では他に例を探し得ない、ユニークな存在です。
 こうした方法と精神でシベリウスのヴァイオリン音楽に当たっている佐藤まどかの演奏は、いままでは折を得て接するコンサートで聴いてきて、大きな印象と感銘に誘われましたが、こんどはいよいよCD化への、連続的活動が始まります。シベリウス没後50年記念の2007年にふさわしい試みです。
 その初回に選ばれた作品は、巨匠50年記念の1915年からの4年間に続けて書かれた4つのセット、作品78〜81です。時期的には大作、そして代表作の第五交響曲の初稿から、決定稿となった第二改訂稿への取り組みの期間、一方、世界規模の戦争の時代でした。ここに聞くのは第五交響曲が堂々たる大造型であるのに対して、これらの、一連のヴァイオリン音楽は、そうした巨匠の、内側の、心の想いのかずかずでしょう。ほとんどが表題的発想による親しみやすい小品のいろいろ。この演奏に際しては、作品78,79,80はハンセン社、81はファツェル社の出版譜が一般的ですが、佐藤は一部の曲については、マヌスクリプトとの照合から、出版譜への修正を行っているとの、良心的アプローチ。なお競演のピアニストに往年のシベリウス指揮者渡邉暁雄の子息に当たる規久雄を選んで、協奏の音楽のうえからもシベリウスに近づこうとしている計らいはさすがと思われます。